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企業法務の自習室

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却下決定後の保全命令の再申立ての可否

保全命令の申立てが却下された後に、同じ申立人が同一の被保全権利、保全の必要性に基づき、再度保全命令の申立てをすることができるか?という問題について。

 

 

こちらの書籍に、ズバリの回答が載っていました。

 

民事保全の実務(第3版増補版) (上)

民事保全の実務(第3版増補版) (上)

 

やはりこれはバイブル。ちなみに、Q25〔112頁〕です。

 

保全手続の裁判には既判力がない(被保全権利についての実体的確定力がない)ことは異論がないので、問題は、保全手続相互間における、前訴の判断の後訴裁判所に対する拘束力の有無ということになります。

 

これについては、保全手続の裁判が疎明を基礎とする暫定的なものであることを理由とする拘束力否定説と、法的安定と訴訟経済を理由とする拘束力肯定説があるようです。

なお、拘束力肯定説も、保全の必要性が異なる場合には、前訴には拘束力はないとしています。また、疎明資料が新たに付け加えられた場合についても、結論としては、再度の申立てが許されるとの見解が有力なようです。

 

よって、問題となるのは、被保全権利も、保全の必要性も、さらには疎明資料も全く同一の再申立てが許されるか、という場合です。つまり、提出書面が同じケースです。そんなケースあるのか・・・・と思いますが、理論上はないとは言えないですね。

 

拘束力を認めた場合には、再度の申立ては不適法という理由で却下決定が出ることになるのでしょうか。拘束力ではなく、権利保護の必要性や、民事訴訟における信義則の観点から許されない、とする見解もあるようです。

個人的には、却下決定後の同一書面による再申立ては、明らかに審理の蒸し返しなので、信義則の観点から許されないとするのがストレートのように思います。

 

なお、保全命令の申立ての取下げ(いかなる段階においても行うことができます。民事保全法18条)がなされた場合には、最初から申立てがなかったことになりますから、拘束力の有無に関する見解に関わらず、再申立てが認められることになります。ただ、一度、保全命令が認められた後に取下げをして、その後に再申立てをしている場合には、何らかの事情の変更があるはずなので、再申立てであることを裁判所が認識した場合には、再申立てに至った理由(=保全の必要性)を記載せよと裁判所から言われそうな気がします。

 

〔熊谷 真喜〕