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企業法務の自習室

企業法務に関連する情報を発信しています。

消滅時効【民法改正を自習する】

民法改正で消滅時効はどのように変更されたでしょうか。

なお、なぜ消滅時効から始めるかというと、今日書いた準備書面で時効の援用に触れたからです。少しでも仕事に引っ掛かりのあるところから勉強して、知識を脳に定着させようと思います!

 

  

 

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改正の概要

改正点については、法律案要綱をベースに、法務省:「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」(平成25年2月26日決定)と新旧対照表となどを見ながら確認していこうと思います。

 

消滅時効についての改正点は以下のとおりです。

  1. 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点
  2. 定期金債権等の消滅時効
  3. 職業別の短期消滅時効等の廃止
  4. 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法第724条関係)
  5. 生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効
  6. 時効の完成猶予及び更新
  7. 時効の援用

 

債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点

 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅するものとすること。(第百六十六条第一項関係)
1 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
2 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
 

(要綱8頁)

 

これまで、債権の消滅時効は10年、但し商行為によって生じた債権については5年でした。これを、職業別の短期消滅時効を廃止するとともに、契約に基づく一般的な債権については5年、それ以外(事務管理や不当利得に基づく債権)については10年、安全配慮義務違反など、生命・身体の侵害による損害賠償請求権については20年、に整理したという感じでしょうか。

 

改正の理由については、中間試案の乙案に関する解説が参考になります。少し長いですが引用します。太字は私が付しました。

 

「権利を行使することができる時」から10年間という現行法の時効期間と起算点の枠組みを維持した上で,これに加えて「債権者が債権発生の原因及び債務者を知った時(債権者が権利を行使することができる時より前に債権発生の原因及び債 務者を知っていたときは,権利を行使することができる時)」から[3年間/4年間/5年間]という短期の時効期間を新たに設け,いずれかの時効期間が満了した時に消滅時 効が完成するとする考え方である。契約に基づく一般的な債権については,その発生時に債権者が債権発生の原因及び債務者を認識しているのが通常であるから,その時点から[3年間/4年間/5年間]という時効期間が適用されることになり,時効期間の大幅な長期化が回避されることが想定されている。もっとも,契約に基づく一般的な債権であっても,履行期の定めがあるなどの事情のために,債権者が債権発生の原因及び債務者を知った時にはまだ権利を行使することができない場合があるので,この[3年間 /4間/5年間]という短期の時効期間については,権利を行使することができる時から起算されることが括弧書きで示されている。他方,事務管理・不当利得に基づく一定の債権などには,債権者が債権発生の原因及び債務者を認識することが困難なものも あり得ることから,現状と同様に10年の時効期間が適用される場合も少なくないと考えられる。このような長短2種類の時効期間を組み合わせるという取扱いは,不法行為 による損害賠償請求権の期間の制限(民法第724条)と同様のものである。 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権のように,不法行為構成を採用した場合の時効期間が短いために,債務不履行構成を採用することに意義があるとされているものについては,原則的な時効期間の定め方とは別に,生命又は身体に生じた損害に係る損害賠償請求権の消滅時効について特則を設けることによって(後記5),現在よりも時効 期間が短くなるという事態の回避を図ることが考えられる。

 

(中間試案25頁)

  

定期金債権等の消滅時効

1 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅するものとすること。(第百六十八条第一項関係)

(一)債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
(二)(一)に規定する各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。
2 民法法第百六十八条第一項後段を削除するものとする。
3 民法第百六十九条を削除するものとする。

 

(要綱8頁)

 

定期金債権とは、一定の金銭その他の代替物を定期に給付させることを目的とする債権をいい、 終身もしくは一定の有期の年金債権、定期の恩給を受ける権利、定期の扶助料を受ける権利、地上権の地代債権がこれに当たります。各期に支払うべき個々の債権を支分権、支分権を生み出す基本となる債権を基本権といいます。

元本債権に伴う利息債権、賃貸借に伴う賃料債権は含まないと解されています。

中間試案には「定期金債権の時効期間は,債権の原則的な時効期間よりも長期であることが適当と考えられる」とあるので、そのような性質に鑑み、行使できるこを知った時から10年(一般の債権は5年)、行使できる時から20年(一般の債権は10年)とされています。そして、「独自の存在意義が認められない」ということで168条1項後段は削除され、短期消滅時効に関する169条は削除されました。年金受給者に手厚い民法。

 

職業別の短期消滅時効等の廃止

民法第百七十条から第百七十四条までを削除するものとすること。

 

(要綱8頁)

 

バッサリ削除されました。ちなみに、削除された171条には、弁護士が受け取った書類の返還義務の時効は3年、弁護士の職務に関する債権の時効は事件が終了した時から2年とされていました。

 

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法第724条関係)

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅するものとすること。(第七百二十四条関係)
1 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
2 不法行為の時から20年間行使しないとき。

 

(要綱8頁)

 

一見、何も変わっていないようですが実は、「不法行為の時から20年」というのは、時効の中断や停止が認められない除斥期間ではなく、消滅時効なのですよ、ということを明確にするために、「同様とする」という文言を使わずに、「行使しないとき」との文言に改めたということです。

 

民法第724条後段の不法行為の時から20年という期間制限に関して,中断や停止の 認められない除斥期間であるとした判例(最判平成元年12月21日民集43巻12号2209頁)とは異なり,同条後段も同条前段と同様に時効期間についての規律であること を明らかにするものである。上記判例のような立場に対して,被害者救済の観点から問題 があるとの指摘があり,停止に関する規定の法意を援用して被害者の救済を図った判例(最判平成21年4月28日民集63巻4号853頁)も現れていることを考慮したものである。除斥期間ではないことを表すために,同条後段の「同様とする」という表現を用いない書き方を提示しているが,これはあくまで一例を示したものである。

 

(中間試案26頁)

 

「同様とする」だとなぜ時効ではなく除斥期間なのか、と不思議に思って最判平成元年12月21日民集43巻12号2209頁を確認してしまいました。

 

民法七二四条後段の規定は、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものと解するのが相当である。けだし、同条がその前段で三年の短期の時効について規定し、更に同条後段で二〇年の長期の時効を規定していると解することは、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図する同条の規定の趣旨に沿わず、むしろ同条前段の三年の時効は損害及び加害者の認識という被害者側の主観的な事情によってその完成が左右されるが、同条後段の二〇年の期間は被害者側の認識のいかんを問わず一定の時の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存続期間を画一的に定めたものと解するのが相当であるからである。

  

へえ・・・・。ちなみに国賠事案でした。

 

改正案だと、柱書に「時効によって消滅する」と明記されているので除斥期間と解する余地はなくなったということなのですね。

 

ちなみに、最判平成21年4月28日民集63巻4号853頁は、「被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した」という凄い事案でした。

 

生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効 

1 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての四1の規定の適用については、四1中「三年間」とあるのは、「五年間」とするものとすること。(第七百二十四条の二関係)
2 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての一2の規定の適用については、一2中「十年間」とあるのは、「二十年間」とするものとすること。(第百六十七条関係)

 

(要綱9頁)

 

「一般の債権と不法行為 による損害賠償請求権とで時効期間と起算点の枠組みが共通のもの」(中間試案27頁)となるように行われた改正ですね。生命や身体は重要な法益である、ということから、客観的起算点、主観的起算点のいずれも長い方に合わせられました。

 

時効の完成猶予及び更新

1  裁判上の請求等
(一)次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しないものとすること。(第百四十七条第一項関係)
(1)裁判上の請求
(2)支払督促
(3)民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停

(4)破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
(二)(一)の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、(一)の(1)から(4)までに掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始めるものとすること。(第百四十七条第二項関係)
2 強制執行等
(一)次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しないものとすること。(第百四十八条第一項関係)
(1)強制執行
(2)担保権の実行
(3)民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
(4)民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続
(二)アの場合には、時効は、アの(ア)から(エ)までに掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

3 仮差押え等
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しないものとすること。(第百四十九条関係)
(一)仮差押え
(二)仮処分
4 強制執行等及び仮差押え等による時効の完成猶予及び更新の効力
 2(一)の(1)から(4)まで又は3の(一)若しくは(二)に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、2又は3の規定による時効の完成猶予又は更新の効力を生じないものとすること。(第百五十四条関係)
5 承認
(一)時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始めるものとすること。(第百五十二条第一項関係)
(二)(一)の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しないものとすること。(第百五十二条第二項関係)
6 催告
(一)催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しないものとすること。(第百五十条第一項関係)

(二)催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、(一)の規定による時効の完成猶予の効力を有しないものとすること。(第百五十条第二項関係)
7 天災等による時効の完成猶予
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため1(一)の(1)から(4)まで又は2(一)の(1)から(4)までに掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しないものとすること。(第百六十一条関係)
8 協議による時効の完成猶予
(一)権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しないものとすること。(第百五十一条第一項関係)
(1)その合意があった時から一年を経過した時
(2) その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
(3)当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時

(二)(一)の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の(一)の合意は、(一)の規定による時効の完成猶予の効力を有するものとすること。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができないものとすること。(第百五十一条第二項関係)
(三)催告によって時効の完成が猶予されている間にされた(一)の合意は、(一)の規定による時効の完成猶予の効力を有しないものとすること。(一)の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とするものとすること。(第百五十一条第三項関係)
(四)(一)の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、からまでの規定を適用するものとすること。(第百五十一条第四項関係)

(五)(四)の規定は、(一)(3)の通知について準用するものとすること。(第百五十一条第五項関係)

 

 

(要綱9頁)

 

長いですね。途中で挫折しそうになりました。

「第七 消滅時効」の項にまとめられていますが、取得時効などにも適用がある、現行法における「時効の中断」を、「時効の完成猶予」「時効の更新」という概念で再構成したものです。

 

民法第147条以下に規定されている時効の中断事由に対しては,ある手続の申立て等 によって時効が中断された後,その手続が途中で終了すると中断の効力が生じないとされ るなど,制度として複雑で不安定であるという指摘がある。本文は,こうした問題意識を 踏まえて,その効果が確定的に覆らなくなり,新たな時効期間が進行を始める時点(同法 第157条)を捉えて,時効の中断事由を再構成するものである。ここで再構成された事 由は,従前と同様に取得時効にも適用可能なものと考えられる。なお,「時効の中断事由」 という用語は,時効期間の進行が一時的に停止することを意味するという誤解を招きやす いと指摘されており,適切な用語に改めることが望ましい。ここでは,差し当たり「時効期間の更新事由」という用語を充てている。

 

(中間試案28頁)

 

 細かいところがいろいろ変ってるんですが、それはもう、新法を素読して「そういうものなんだ」と理解するほうが早そうです。なお、大きな改正としては、当事者間の協議による時効の完成猶予が認められた、という点があります。「当事者間で権利に関する協議が継続している間に,時効の完成を阻止するためだけに訴え を提起する事態を回避できるようにすることは,当事者双方にとって利益である」(中間試案30頁)との理由から新設されました。

 

時効の援用

時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができないものとすること。(第百四十五条関係)

 

 

これは、現行法で「当事者」となっているのが誰だか不明確、ということで、「(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)」との加筆がなされたものです。

 

民法第145条は「当事者」 が援用するとしているが,判例上,保証人(大判昭和8年10月13日民集12巻2520頁)や物上保証人(最判昭和43年9月26日民集22巻9号2002頁)などによる 援用が認められている。本文(1)は,こうした判例法理を踏まえて援用権者の範囲を明文化 するものである。判例(最判昭和48年12月14日民集27巻11号1586頁)が提示した「権利の消滅により直接利益を受ける者」という表現に対しては,「直接」という基準が必ずしも適切でないという指摘があるので,それに替わるものとして「正当な利益を有する第三者」という文言を提示しているが,従前の判例法理を変更する趣旨ではない。 

 

(中間試案31頁)

 

消滅時効については、以上です。

 

〔熊谷 真喜〕