グループ内組織再編であれば、株主に対する通知・公告の期間短縮や省略ができるか?
旬刊商事法務2127号(3/5)の辰巳郁弁護士による「実務問答会社法」では、「吸収合併における株主に対する通知・公告の期間短縮・省略と簡易合併・略式合併」を取り上げています。
三つある設問のうち、一つが以下のとおりです。
設問
1 吸収合併の当事会社において、効力発生の20日前までに必要となる株主への通知・公告について、すべての株主の同意により、その期間を短縮し、またはこれを省略することができるか。
(略)
回答
1 株式買取請求券を行使し得るすべての株主の同意により、通知・公告の期間を短縮し、またはこれを省略することができる。
(辰巳郁「吸収合併における株主に対する通知・公告の期間短縮・省略と簡易合併・略式合併」旬刊商事法務2127号43頁)
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話を設問に戻して、株式買取請求権の行使の機会を保障するとの趣旨から義務付けられている効力発生日の20日前までの株主への通知・公告ですが、この期間を短縮できるか、又は手続を省略できるか、といったことは、これまであまり考えたことがありませんでした。
上記記事の見解は、客観的に株式買取請求権を行使し得るすべての株主から同意を取得できれば、期間短縮も手続省略も認められるべきである、というものです。
確かにそうかも・・・と思いましたが、同意を取得しなければならないのは「客観的に株式買取請求権を行使し得るすべての株主」からなので、効力発生日までに株式の異動があると、新たに株式を取得した株主からも同意を取り直さなければならないことから、実務的には、利用できるのはグループ内組織再編の場合に限定されそうです。そして、グループ内組織再編の場合は、「通知」はとても簡単にできてしまいます。そうすると、期間の短縮や通知の省略をする実益がある場合とは、債権者保護手続を採る必要がない場合(=株主への通知公告を省略することによってさらなる期間短縮ができる場合)に限られそうです。
今度案件が来た時に、具体的にあてはめて、復習してみよう・・・・。
〔熊谷 真喜〕